草野球音が同年輩の友人、戸坂健作(とさか・けんさく)と焼肉を食べに行ったときのことである。店内の壁に貼ってあるメニューを観ながら、「農酒マッコリって書いてあるけど、農酒ってマッコリのことかい」と、戸坂に問うた。
戸坂は早速、愛用のipad(といっても最も旧式のヤツ)を取り出し、検索した。
「あった!」と得意げな顔でひとくさり。「ハングルで『マッ』は『粗雑に』、『コルリ』は『濾(こ)す』の意味だな。つまり『粗雑に濾した酒』というわけさ」
「農酒というのは?」
「その昔、韓国では農作業をしながら水分補給に、水代わりに飲んでいたので『農酒』とも言うのだ」
戸坂がふんぞり返った。
偉そうな……。彼がエライのではない。知識を知る手段であるインターネットがエライのだが、いかにも自分の知識のように語るのだった。
これはいつも彼の悪い癖。
別名「トリ頭検索」というあだ名がある。
戸坂(とさか)は「鶏冠(とさか)」と同じ発音で、「鶏冠」はニワトリの頭。ニワトリは3歩歩くと、すぐモノ忘れてしまうところから、忘れっぽい輩(やから)を陰口で「トリ頭」というそうな。
「健作」は「検索」と通じ、よってネット検索を頼りにその場凌(しの)ぎ知識を曝(さら)け出し、翌日には調べた内容をすっかり忘れてしまう。
この戸坂健作を、友人たちは半ばおちょくりながらも親愛の情をこめ「トリ頭検索」と呼んでいるのである。
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