2012年11月22日木曜日

加賀赤絵展:日本橋高島屋

赤絵・加賀藩・九谷焼・青木木米・永楽和全・フィラデルフィア万博――。

 赤絵ってなぁに?――やきもの素人が「魅惑の赤、きらめく金彩 加賀赤絵展」を東京・日本橋の日本橋高島屋で観る。開催2012118日~1126日。

 まず赤絵とは、デジタル大辞泉の解説では「赤色を主として彩色した陶磁器」とある。伝来の中国では五彩というそうな。

 本展では、中国明代の景徳鎮窯の万暦赤絵から、江戸時代の再興九谷諸窯、万博などに出品されたジャパン・クタニ、そして現代まで、加賀赤絵の名品約150点を集め、その系譜をたどっている。

 加賀藩では、18世紀初め江戸時代後期に京都の名工・青木木米(あおき・もくべい)を招き、中国赤絵の写しを作らせた。その技術と意匠が受け継がれ細描化し、独特の作風を生み出した。幕末に京都の永楽和全(えいらく・わぜん)が金彩の技術を伝え、赤絵金彩が出現した。明治に入り、赤と金で彩られた九谷焼は主力輸出品のひとつとなり、フィラデルフィアやパリ万国博覧会に出品され一代ブームが起った。
――以上、パンフレットの受け売り(笑)。

・加賀藩
・赤絵
・九谷焼
・青木木米
・永楽和全
・フィラデルフィア万博
など、あらためて自宅で言葉や人名などネット検索しながら、
本展をふりかえると赤絵の魅力がより実感できました。

20121120日観覧
美博の館#47
 
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2012年11月17日土曜日

今野敏「ST 黄の調査ファイル」

曹洞宗⇒鶴見線⇒武蔵白石⇒扇島海水浴場――。

 今野敏の「ST警視庁科学特捜班 黄の調査ファイル」(講談社文庫)を読む。STシリーズ第6弾、「色シリーズ」の第3弾。


 足立区のマンションの一室で4人の死体が発見された。男2人女2人。いずれも二十歳前後。死因は一酸化炭素中毒。4人は新興宗教団体に所属していた。検死した川那部警視は自殺と断定したが、STは他殺の線も捨てなかった。
 実家が曹洞宗の寺で僧侶でもあるSTメンバー山吹才蔵が、宗教団体の人間関係に迫る。

×  ×  ×

曹洞宗の大本山といえば、横浜市鶴見の総持寺が名高い。
石原裕次郎さんのお墓がある。

ガキのころは「本山」と呼んでいた遊び場だった。
山の斜面を滑り降りたり、駆け登ったり、ワイルドな遊びをしていた。
川崎小田の自宅から歩いて20分ほど。
武蔵白石駅から鶴見線に乗って鶴見駅へ行ったっけ。

武蔵白石といえば、思い出は海水浴である。
乗船場があったんだよ。
ポンポン船(渡し船)に乗って扇島海水浴場へ。
昭和30年代前半に廃止され泳げなくなった。
京浜工業地帯の真ん中、海はお世辞にもきれいとはいえなかった()
小学校4年生か5年生が最後の夏だった。

武蔵白石、安善、浅野……。
あの鶴見線に乗ってみたい。
あの扇島の海水浴場って今どうなってるのだろうか。

曹洞宗の僧籍を持つ山吹才蔵が主役の、
ST 黄の調査ファイル」を読みながら、遠い昔を思い出しました。

20121116日読了
 
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2012年11月15日木曜日

はじまりは国芳:横浜美術館

「相馬の古内裏」「近江の国の勇婦於兼」に惹かれました――。

 斬新奇想な作風で知られる江戸末期の浮世絵師・歌川国芳(うたがわ・くによし=1798年(寛政9年)―1861年(文久元年)の作品を中心とした「はじまりは国吉―江戸スピリットのゆくえ」展を横浜・みなとみらいの横浜美術館で観る。開催2012113日~2013114日。

 本展は、国芳の作風がその一門や系統にどのように受け継がれ、新しい展開を見せたかを、江戸末期から昭和初期の日本画、油彩画、水彩画、版画、刊本などの作品や資料、約250点の展示で探る。

 
本展構成
1章:歌川国芳と幕末明治の絵師たち
   (歌川国芳、歌川芳虎、歌川芳艶、歌川芳藤、落合芳幾ほか)
2章:歌川国芳と日本画の系譜
   (河鍋暁斎、月岡芳年、水野年方、鏑木清方、鰭崎英朋ほか)
3章:歌川国芳と洋風表現:五姓田芳柳とその一派
   (五姓田芳柳、五姓田義松、渡辺幽香ほか)
4章:郷土会の画家たちと新版画運動
   (鏑木清方、寺島紫明、伊東深水、川瀬巴水、笠松紫浪ほか)

★相馬の古内裏(そうまのふるだいり)
ドキモを抜かれる巨大な骸骨―この構図が斬新で大胆、躍動感が伝わってきました。
山東京伝の「忠義伝」を題材とした作品で、
源頼信の家老大宅光国と平将門の遺児で妖術を操る滝夜叉姫との対決場面を描いているそうな。
近年評価が高まっている国芳とは初対面。
はやり画力が抜群(素人が知ったかぶり)。
「相馬の古内裏」と★「近江の国の勇婦於兼」に惹かれました。

20121113日観覧
美博の館#46
 
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森光子さんの訃報に雑観

裕ちゃん・錦兄・天狗のおじさんアラカン

偶然っていうのでしょうか。
虫の知らせ?(これは身内じゃないから当てはまらないか)。
訃報が流れた14日。
時間つぶしにiPadで映像を観ていたら、
森光子さんと石原裕次郎さんが「銀座の恋の物語」をデュエットしていました。
お二人に三浦友和さんもいました。
なんで3人がいたのか、不明ですが……。
記念の行事かなにかですな、きっと。
森さん62歳、裕次郎さん48歳、友和さん31歳と字幕にありました。
お宝映像でした。


1965年(昭和40年)東映の作品。
中村錦之助さん主演の「冷飯とおさんとちゃん」というオムニバス映画に、
森さんは出ています。
腕は確かだが呑んだくれの職人(錦之助)を支える、
子だくさんのおかみさんを演じていましたっけ。
1920年生まれですから、あのとき45歳。
40過ぎてから売れた遅咲きの役者さんでした。

★あいつより 上手いはずだが なぜ売れぬ
川柳を詠み下積みに耐え芸を磨いたんですな。

あの鞍馬天狗のおじさん嵐寛寿郎さんは森さんの従兄でしたな。


訃報はいつも追憶を連れてきます。
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2012年11月10日土曜日

島崎藤村展:神奈川近代文学館

まだあげ初めし前髪の 林檎のもとに見えしとき――。
 島崎藤村といえば、当方は「初恋」という詩を思い浮かべるが、
・木曽路はすべて山の中にある――小説「夜明け前」の書き出しを連想する人も……
それとも、
・小諸なる古城のほとり 雲白く遊子悲しむ
・名も知らぬ遠き島より 流れ寄る椰子の実ひとつ
――諳(そら)んじられている作品が多い「島崎藤村展 生誕140年」を観る。
 横浜・山手の港の見える丘公園内の神奈川近代文学館で開催=2012106日~11月18日。


 本展は3部構成で、第1部は木曽馬籠の本陣の旧家に生まれてから「若菜集」で詩人として世に出て「破戒」で小説家に転じ実生活を反映した作品を執筆した前半生、第2部は渡仏から大作「夜明け前」を著わし、生涯を閉じた大磯での晩年、第3部は藤村の詩の世界を作品や書簡、資料などで紹介している。

×  ×  ×

藤村が明治学院で英語を教えていた時代、教え子に恋をした。
その授業がすごい。
藤村が教え子だけに語りかけるような指導。
他の学生は学ぶことができなかったそうな。
結局クビになった。
その後、藤村は姪と不倫関係になった。
そんな逸話を、現代国語の教師が語っていた。
かれこれ50年近く前の話である。

本展でその教え子が「佐藤輔子」で、姪が「こま子」という名前だと知った。
小説は読んだことがないが、藤村の波乱に満ちた生涯に興味を抱いていた。
つまり根っからの「ミーハー」である。

「破戒」は映画化された。
大映の1962年作品で監督は市川崑。
主人公の丑松役は市川雷蔵だった。
藤村志保のデビュー作で、お志保を演じた。
原作者の島崎藤村から「藤村」を頂いたと、平凡か明星か何かで読んだことがある。

バカは死ななきゃ治らない。
我六十路半ば、「ミーハー」もそうだろうか。
まぁ、いいかっ(笑)。

2012118日観覧
美博の館#45

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2012年11月6日火曜日

今野敏「ST 赤の調査ファイル」

「赤城左門」と「赤胴鈴之助」「朱房の小天狗」「紅之介」――。

 今野敏の「ST警視庁科学特捜班 赤の調査ファイル」(講談社文庫)を読む。STシリーズ第5弾で、「色シリーズ」の第2弾。


 STのリーダー法医学担当の赤城左門が自ら研修医をしていた大学病院の医療訴訟問題にメスを入れる。一匹狼を装うが、人を惹きつける男――赤城の過去の挫折と、その魅力の原点がおぼろげに明らかになる。

×  ×  ×

 「STシリーズ」の赤城左門と「赤」つながりの、全く違う話である。

 「赤胴鈴之助」は、ガキのころ熱狂した。武内つなよしの原作漫画。少年画報に連載していた。北辰一刀流の祖、千葉周作道場の少年剣士、金野鈴之助が主人公で、赤い銅は父の形見。早くに父親を亡くすが、父の親友の周作に剣の手ほどきを受ける。「真空斬り」が得意技。兄弟子は竜巻雷之進。

吉永小百合の芸能界デビュー作は「赤胴―」で、ラジオドラマに出演していたそうな。サユリストだけど、残念ながらラジオの記憶はないな。

映画は大映で主演は梅若正二だったぞ。

 「赤」と同義で「朱」がある。
 「赤胴―」と同じころ「朱房の小天狗」という漫画があった。こちらは漫画王の連載。原作うしおそうじ。朱房の十手がトレードマークの岡っ引なんだよね。

 ついでに「赤」「朱」と続けば「紅(くれない)」かな。
 小川眞由美主演の「おんな浮世絵・紅之介参る」なんてテレビドラマもありましたっけ。
 小川さんといえば、得度して尼さんになったそうな。

 以上、どうでもいい、こじつけばかりで失礼しました(笑)。

2012113日読了
 
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2012年11月4日日曜日

池田理代子「リヒテンシュタイン物語」

ナチスの目を逃れた侯爵家のコレクション――。

 「リヒテンシュタイン華麗なる侯爵家の秘宝」展(国立新美術館)とコラボ企画で、池田理代子が書き下ろしたマンガ「リヒテンシュタイン物語」(朝日新聞社)を読む。第二次世界大戦中、ナチスから所蔵の美術品を命をかけて守った侯爵と美術館長の物語。

×  ×  ×

 ヤバイ。見つかっちゃった。
 我が家にズカズカ上がってきた親友「トリ頭」こと戸坂健作が、居間でマンガ本「リヒテンシュタイン物語」を目ざとく目を付けた。「ベルばら」の池田理代子さんの作品だと知るとニヤリとしながら、「六十半ばの爺さんがマンガかよ」とひやかしてきた。



 「六本木の新美(国立新美術館)でやっているリヒテンシュタイン展を観に行って、カミさんが買ったんだよ」と言い訳がましく言うと、「知ってるぞ。あの侯爵家の美術コレクションは有名だから、な」と得意気な顔をした。そして、例のひとくさりが始まった。

――(以下、トリ頭の弁)
リヒテンシュタインは「侯国」だぞ。
「公国」ではないのだよ。
爵位を知ってるかな。貴族の身分を位階序列だな。
・公(爵)はデュークduke
・侯(爵)はマーキスmarquis
・伯(爵)はアールearl
・子(爵)はバイカウントvicount
・男(爵)はバロンbaron
の序列さ。

リヒテンシュタイン家は1608年、ハプスブルク家から世襲の「侯」の位を授かった。
当主は代々オーストリアのウィーンに暮していたが、1938年に侯国のファドゥーツに移り住む。
1938年にオーストリアがナチス・ドイツに併合されたのがきっかけさ。
その年、夏の離宮の侯爵コレクションも公開中止となった。

ナチスは価値の高い美術品の国外持ち出しを禁じた。
そこで、ナチスの目をかいくぐっての移送を計画したのだ。
ばれたら待っているのは死だよ。
ザルツブルクの郊外の岩塩鉱に運んだり、何度となく場所を替えたりした。
夜陰に乗じて国外脱出したり、決死の努力のすえ侯国の都ファドゥーツにたどり着いたのだよ。

2004年になってようやくウィーンの夏の離宮でコレクションが再公開された。
公開中止から実に66年の歳月が流れた。
リヒテンシュタイン・コレクションってドラマティックなのだよ。


今回ばかりは、「トリ頭」の講釈はかなり為になるの最後まで聞いてしまった。
 だが、しかし、彼の知識はネット検索で得たに違いない。
 3歩歩けばモノ忘れするニワトリさんと一緒で、翌日はケロリと忘れているだろう。
 戸坂は「鶏冠」(とさか)に、健作は「検索」に通じて、戸坂健作のあだ名は「トリ頭」だから。愛すべき友である。

2012111日読了
 
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2012年11月3日土曜日

リヒテンシュタイン展:国立新美術館

見上げれば絢爛たる天井画――「バロック・サロン」。

 「リヒテンシュタイン 華麗なる侯爵家の秘宝」展を東京・六本木の東京国立新美術館で観る。開催=2012103日~1223日。

そこには華やかなバロック宮殿の空間があった。
ようこそ、わが宮殿へ――キャッチコピーに偽りなし。
「バロック・サロン」に入ると、見上げれば絢爛たる天井画、視線を落とせば贅を尽くした調度品。
ウィーン郊外ロッサウにあるリヒテンシュタイン侯爵家の「夏の離宮」を再現した展示コーナー。
宮殿招待客のプチ気分にしてくれましたぞ。
名門貴族の生活、かくありなん。



 リヒテンシュタイン侯国は、オーストリアとスイスに囲まれた世界で6番目の小国。面積は小豆島程度の永世中立国。人口35000人。
 同国の国家元首であるリヒテンシュタイン侯爵家は代々美術品蒐集を家訓としており、本展では「クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像」などルーベンス作品10点をはじめ、ラファエロ、レブラントなどの優れたコレクション139点を展示している。

本展構成
・エントランス
・バロック・サロン
・リヒテンシュタイン侯爵家
・名画ギャラリー
 ルネサンス
 イタリア・バロック
 ルーベンス
・クンストカンマー:美と技の部屋
・名画ギャラリー
 17世紀フランドル
 17世紀オランダ
 18世紀―新古典主義の芽生え
 ビーダーマイヤー

★クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像=ペーテル・パウル・ルーベンス1616年頃
無垢な澄んだ瞳。
ふっくらの赤いほっぺ。
親が子に抱く愛おしさを感じます。
ルーベンスが愛娘クララ5歳を描いた作品。
作品はルーベンス工房の共同作業が多いが、これは正真正銘の彼自身の筆によるものだろう。
不幸にも作品から7年後にクララは亡くなったそうな。
愛娘を亡くした父ルーベンスの心、いかばかりか。

惹かれた作品
・「男の肖像」=ラファエロ・サンティ150204年頃
・「マリア・デ・ダシスの肖像」=アンソニー・ヴァン・ダイク162930年頃
・「マリー・フランツィスカ・リヒテンシュタイン侯女 2歳の肖像」=フリードリヒ・ファン・アメリング1836

2012111日観覧
美博の館#44

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