藤沢周平の「長門守の陰謀」(文春文庫)を読む。初期の短編5作を収録。表題作は「長門守事件」といわれる庄内藩のお家騒動を描いた歴史小説。
*「夢ぞ見し」
昌江の夫、小寺甚兵衛は背が低く、肩幅だけある蟹のような風采である。最近、下城が遅い。二十五石の俸禄のくせになんで忙しいのか不思議でならない。
ある日、溝江啓四郎と名乗る若い武士が小寺家に転がり込む。長身にして目もと涼しい白皙(はくせき)だが、口ぶりは横柄だった。
啓四郎が来て半月。遣いから帰宅した昌江は、家の前で啓四郎が四、五人の男を相手に斬り合いしているのを目撃する。
*「春の雪」
みさは父・安蔵の見舞いにいくと、母・おたねから縁談があることを聞かされる。相手は三笠屋の若旦那の徳蔵だった。みさは徳蔵を好かない。
みさには幼なじみが二人いる。機転が利き男っぷりのいい作次郎とのろまでへまばかりする茂太。みさと作次郎は恋中だったが……。
*「夕べの光」
おりんは倅の幸助と二人暮らし。幸助は実の子ではない。死んだ亭主の栄作と先妻の子だったが、乳飲み子から育ててきた。
おりんに縁談が舞い込んだ。相手は小間物屋をしている柳吉だった。
*「遠い少女」
小間物屋の鶴蔵はコツコツ働き店を繁昌させてきた。四十を過ぎて、別の生き方といいたものに心をとらわれるようになっていた。
そんなある日、鶴蔵はおこんという幼なじみの消息を耳にした。裾継(深川の岡場所)で働いているという。
*「長門守の陰謀」
庄内藩家老、高力喜兵衛の家に千賀主水が訪ねてきた。千賀は、長門守忠重が藩主忠勝の世子摂津守忠当を廃してして、後嗣に自分の子九八郎忠広を据えようとの謀りごとがあると告げるのだった。
目次
・夢ぞ見し
・春の雪
・夕べの光
・遠い少女
・長門守の陰謀
× × ×
一番好みの短編は「夢ぞ見し」ですな。東映時代劇にでもありそうな筋書きです。さしずめ溝江啓四郎役は大川橋蔵かな。ラストシーンにニヤリとさせられます。
2011年3月30日読了
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