2011年1月30日日曜日

加藤廣「明智左馬助の恋(上)」

――光秀は、そっと耳元で囁いた。
「お屋形さまを竜神と看たは、ひょっとすると余の錯覚だったかも知れぬな」
「えっ」
 左馬助は絶句した。
 初めて聞く、光秀の信長批判であった――

 安土城での侍女虐殺事件の知らせを聞いた光秀は暗憺(あんたん)たる思いで吐露する描写である。
 加藤廣の「明智左馬助の恋(上)」(文春文庫)を読む。「信長の棺」「秀吉の枷」に続く本能寺三部作の完結編。

 先祖に後醍醐天皇にゆかりを持つ三宅弥平次は光秀の娘・綸とともに明智家で育てられる。
 織田信長の有力武将・荒木村重に謀反の動きが発覚する。綸は信長の命で村重の嫡男・村次に嫁いでいる。信長から村重説得の任を受けた光秀だが、翻意に失敗する。が、綸は荒木家から離縁され、戻ってくる。光秀は男子を儲けているが、病弱で嗣子の器ではない。娘の綸の婿に弥平次を迎え、光秀は明智家の後継に据える。弥平次は名を明智左馬助と改めた。
 上昇志向の強い光秀は秀吉と出世争いを繰り広げていた。学識があり事務処理能力に優れている光秀は、信長になにかと便利に酷使されてきた。
 朝廷さえ無視し、残忍な行為を繰り返す信長に右往左往させられる光秀。そんな光秀を不安の目で見守る左馬助であった……。

上巻目次
・第1章:摂津動乱
・第2章:人質解放
・第3章:明智左馬助
・第4章:抜擢人事
・第5章:天下布武
 天正9年の「京都馬揃え」ごろまでが上巻で描かれている。

×  ×  ×

 かくして本能寺の変は下巻ということになるのですな。
2011年1月30日読了

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