2008年3月23日日曜日

竜巻雷之進:林成年死す

 天下の二枚目、長谷川一夫の長男で俳優の林成年(はやし・なりとし、本名長谷川寿=はせがわ・ひさし)が2月6日、心不全で死去したことが2008年3月20日に分かり、翌21日付の新聞の訃報欄に掲載された。76歳だった。葬儀は近親者で終えた。
 慶応大学卒業後に大映から映画デビューし、「新・平家物語」、「大阪物語」、「赤胴鈴之助」シリーズ、伊丹十三監督の「たんぽぽ」などに出演。後年は舞台に活動を移し、東宝歌舞伎などに出演した。

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 「チョコザイな小僧め、名を名乗れ」
 「赤胴鈴之助だぁ」
で始まるのは、ラジオ番組「赤胴鈴之助」であった。
 武内つなよし(1926年―1987年)原作で、昭和30年代に一世を風靡した少年雑誌「少年画報」の連載漫画である。以前に「僕らのナマカ赤胴鈴之助」(2007年10月30日)で書いたので、参照されると幸いである。

 その赤胴鈴之助の映画版は梅若正二の主演で、大映で製作された。鈴之助の千葉周作道場の兄弟子、竜巻雷之進役が林成年であった。
 竜巻雷之進は、鈴之助の入門当初、彼を快く思わず敵対するが、後にふたりの間に友情を芽生えるのだった。千葉周作役は渋い黒川弥太郎(1910年―1984年)だった。1957年(昭和32)から1958年の7本製作された。草野球音は漫画に夢中になった世代である。林成年といえば、その竜巻雷之進役が印象に残る。

 1957年の「大阪物語」(大映・吉村公三郎監督)は演技で光った作品と、当時子供ながらに認識している。井原西鶴の「日本永代蔵」などを題材した内容で、中村雁治郎(1902年―1983年)の放蕩息子役だった。

 ちなみに長谷川一夫を親とし、長谷川稀世長谷川季子は妹である。

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 偉大な先代を親にもつ二世の宿命だろうか。

 訃報までも長谷川一夫(1908年―1984年)の息子として扱われる林成年も、さぞや辛かろうと、思った。その人を伝えるキャッチフレーズというか、枕詞(まくらことば)が、彼の場合、「長谷川一夫の息子」が付いて回り、死んでからも案の定だった。

 訃報が新聞に掲載されたのが、2008年3月21日だから、死後1ヶ月余も経過していた。近親者に見守られて静かに逝ったということが、想像される。
 先代・長谷川一夫の死はマスメディアが大きく扱い、死後、冒険家の植村直己(1941年―1984年)とともに国民栄誉賞を受賞している。1984年(昭和62)中曽根康弘内閣のときだった。

※蜘蛛巣丸太「草野球音備忘録」では人物名の敬称を省略しています。文章中で記憶違い・事実誤認・赤字などがありましたら、ご指摘くだされば幸いです。また赤字などの訂正、文章表現などの加筆は随時行っています。

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