2008年1月20日日曜日

続・瞼の裏で咲いている1961

昭和36年編
 1961年・昭和36年は、ジョン・F・ケネディが米大統領に就任し、ソ連の宇宙船ボストーク1号で地球1周に成功したガガーリンが「地球は青かった」の名言を残し、赤木圭一郎がゴーカートで撮影所の壁に激突、夭折した年であった。
 そして「シャボン玉ホリデー」が始まった年でもあった。

 あのころ日曜日の午後6時台は草野球音たち「テレビっ子」のゴールデンタイムだった。6時からは6チャンネル=TBS系「てなもんや三度笠」(注=番組開始は1962年)で、藤田まことの「あんかけの時次郎」に笑い、6時30分にはチャンネルを4=日本テレビ系に回して(当時のテレビはチャンネルを手で回した)、「シャボン玉ホリデー」で植木等(1926年―2007年)の「お呼びでない」のコントに笑った。ハナ肇(1930年―1993年)ザ・ピーナッツの父子に扮した「お粥コント」も定番のくすぐりだった。

 上記2番組は、「おれがこんなに強いのも、あたり前田のクラッカー」の前田製菓と、牛乳石鹸の提供番組だった。スポンサーまで覚えている番組なんて、今どきないよなぁ。それだけ白黒画面にかぶりついていたのだった。

 「シャボン玉ホリデー」は歌あり、コントありの音楽バラエティ番組だった。ザ・ピーナッツとハナ肇とクレージー・キャッツが主役だった。小松政夫、なべおさみ、布施明、伊東ゆかり、中尾ミエなど渡辺プロのタレントに、青島幸男(1932年―2006年)、前田武彦らの放送作家兼タレントも出演し、にぎやかだった。

 バカに面白いのは植木等だった。「お呼びでない‥‥これまた失礼致しました」という植木等のギャグが生まれたのも、この番組であった。ギャグが流行語になったのは2、3年後だったが、昭和36年には「スーダラ節」(青島幸男作詞・萩原哲晶作曲)がヒットした。
 「スイ、スイ、スーダラダッタ」と平泳ぎの手の動作で足をステップさせる少年たちの間で大流行し、人前でやるには憚(はばか)る気持ちはあったが、「わかっちゃいるけどやめられない」のだった。

 音楽バラエティ番組ではNHKの「夢であいましょう」が始まったのも同年である。中嶋弘子、黒柳徹子が司会を務めた。ここから世界的ヒット曲「スキヤキ」は誕生したのだった。同年8月の「今月の歌」のコーナーで、永六輔作詞・中村八大(1931年―1992年)作曲「上を向いて歩こう」坂本九(1941年―1985年)が歌った。
 「6・8・9」トリオの「上を向いて歩こう」は海を渡り、「スキヤキ」として1963年にはビルボード年間ランキング10位となった。レコードは米国内で100万枚を突破し、世界70余国で発売され総売上枚数は1,300万枚に達したという。国内でもヒット曲したが、「世界的に売れた」というのは空前の快挙といっていい。

 「夢であいましょう」からジェリー藤尾の「遠くに行きたい」(1962年)デューク・エイセスの「おさななじみ」(1963年)梓みちよの「こんにちは赤ちゃん」(1963年)のヒット曲が生まれた。いずれも永六輔作詞・中村八大作曲である。

 坂本九は川崎っ子で、草野球音には同胞の親近感があった。雑誌「平凡」や「明星」で得た知識だが、橋幸夫とともに「九人兄弟の末っ子」であったと記憶している。その九ちゃんと一緒にテレビに出ていたのが森山加代子だ。「じんじろげ」(渡舟人作詞・中村八大作曲)のヒットを飛ばしたのは昭和36年である。
 ♪シッカリコマタキ ワイワイ
意味不明の歌詞だが、リズミカルで面白かった。
 ♪ラメチャンタラ ギッチョンチョンデ
の「パイのパイのパイ」なんて歌もあったなぁ。やたら不思議な歌が多かった加代ちゃんだった。
 
 同年、「東京ドドンパ娘」(宮川哲夫作詞・鈴木庸一作曲)でハスキーな歌声を披露したのは渡辺マリだった。フランク永井は「君恋し」(時雨音羽作詞・佐々木紅華作曲)で低音を響かせ、村田英雄「王将」(西條八十作詞・船村徹作曲)をドスの効いた声で聴かせた。

 石原裕次郎と牧村旬子のデュエット曲「銀座の恋の物語」(大高ひさを作詞・鏑木創作曲)、仲宗根美樹の「川は流れる」(横井弘作詞・桜田誠一作曲)、五月もどりの「おひまなら来てね」(枯野迅一郎作詞・遠藤実作曲)、島倉千代子の「恋しているんだもん」(西沢爽作詞・市川昭介作曲)などがヒットした。

 また外国の曲をカバーした西田佐知子の「コーヒールンバ」や、越路吹雪の「ラストダンスは私に」、飯田久彦の「悲しき街角」などもよく歌われた。コニー・フランシスの「ボーイ・ハント」やニール・セダカの「カレンダーガール」もよく耳にした。

 昭和36年の日本映画の佳作を挙げると、
「不良少年」(岩波映画・羽仁進監督)=山田幸男出演
「用心棒」(黒澤プロ=東宝・黒澤明監督)=三船敏郎出演「人間の条件」(文芸にんじんくらぶ・小林正樹監督)=仲代達矢
「名もなく貧しく美しく」(東京映画=東宝・松山善三監督)=高峰秀子出演
などがある。

 外国では、ジョージ・チャキリスとナタリー・ウッドのミュージカル映画「ウエストサイド物語」、トルーマン・カポーティの原作の映画化でオードリー・ヘプバーンが主演した「ティファニーで朝食を」などが注目された。

※蜘蛛巣丸太「草野球音備忘録」では人物名の敬称を省略しています。文章中で「主」の記憶違い・事実誤認・赤字などがありましたら、ご指摘くだされば幸いです。

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