藤沢周平の「闇の傀儡師(上)(下)」(文春文庫)を読む。
筆耕で糊口を凌ぐ御家人くずれの鶴見源次郎はある夜、斬り合いに出くわし、深手を負った男を助けるために剣を抜く破目になった。古式の柳生流を遣う浪人と対峙したが、どこからか合図があり浪人たちは霧散した。
瀕死の男に駆け寄ると、今際の際に「八は田に会す、ご用心」と書かれた紙片を託された。どうやら公儀隠密らしい。
斬り合いの因は将軍継嗣問題にあり、「田」とは権勢にある老中の田沼意次。「八」とは駿河大納言忠長の流れをくむ、幕府に連綿と恨みをもつ徒党であることが、次第に判ってくる……。
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この伝奇小説の歴史的背景を草野の友人『トリ頭』こと戸坂健作の言い分を聞いてやってください。
――以下トリ頭の弁。
田沼意次が権勢を揮った時代の将軍さまは10代家治だな。
将軍継嗣の問題ってえのは11代将軍。
家治の嫡男が家基で、当然11代と目されていた。
ところが、鷹狩りの際に立ち寄った品川の東海寺で倒れる。16歳の若さだった。
原因不明の死であることから、暗殺説や毒殺説が当時からささやかれたそうだな。
家基が亡くなって11代は家斉となった。
こいつは一橋家、御三卿だ。
家斉のオヤジが8代吉宗の孫で一橋民部卿(徳川治済=はるさだ)だ。
家基がいなくなって一番利のある人間だな。
暗殺は一橋民部卿の企てなんて説が持ち上がったのだ。
田沼の後は老中松平定信の時代となるが、上総介(定信)は御三卿の田安家だな。
ところで、八嶽党という駿河大納言の流れをくむ徒党が登場したな。
駿河大納言忠長といえば、徳川忠長のこと。
2代将軍秀忠と江の子どもで、兄は3代家光だ。
駿府藩主で従ニ位大納言であるところから、通称が駿河大納言。
江は手元で育てた忠長を溺愛した。
春日局に育てられた家光。
忠長と家光の将軍職をめぐっての悶着は、よくドラマや芝居になっている。
長幼の序を重視した大御所・家康の断で、家光が3代に就いたんだ。
後に忠長は不行跡で家光の命で自栽することになる。
このあたりが忠長の流れをくむ幕府に恨みを抱く八嶽党の素地だ。
里見浩太朗の「松平長七郎」は、は忠長の遺児だ。なんちゃって、な。史実には親子関係はないぞ、わかったか、草野。
ハイハイわかりました。
またネット検索で得た知識をさらけ出しているに違いない。
時代小説は歴史的な背景を知ってこそ理解が増すというものですな。
時代小説は歴史的な背景を知ってこそ理解が増すというものですな。
目次
(上)
・八嶽党
・追跡
・老剣客
・忍びよる影
・春の雷鳴
(下)
・春の雷鳴(承前)
・暗い雲
・辻斬り
・世子評定
・風刀・雷刀
・往きて還らず
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