2010年2月11日木曜日

立松和平とお国訛り考

誠実さを醸す笠智衆
 環境保護活動などでも知られる作家の立松和平(たてまつ・わへい、本名・横松和夫)が2010年2月8日亡くなった。62歳だった。テレビ朝日の報道番組「ニュースステーション」のリポーター役として、朴訥とした栃木訛りの語りが印象に残る。宇都宮市出身。

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 栃木訛りといえば、『ミッチー』で親しまれた政治家の渡辺美智雄(みんなの党代表・渡辺喜美の父)が有名だが、その他にも、
・ガッツ石松:元WBC世界ライト級チャンピオン。OK牧場のギャグあり
・つぶやきシロー:最近ムカついたことなど、あるあるネタで一時は売れっ子
・東京ボン太:唐草模様の風呂敷が懐かしい。「夢もチボーもないよ」
・U字工事:「ごめんね、ごめんね」のギャグ。栃木を自慢したり自虐的に語る漫才
と挙げられる。

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 お国訛りはその人を誠実に見せる――草野の私見だが、この場合、メジャーな都市の東京弁、大阪弁、京都弁は除く。大都会に対するマイナーな県、『田舎』(語弊があるかもしれないが)の訛りでなくてはならない。

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 笠智衆は熊本訛りがあってこそ、『映画俳優・笠智衆』なのではないか。熊本県玉名郡玉水村のお寺の生まれで、本名だそうだ。生涯抜けなかった訛りがその台詞回しの特徴となった。小津安二郎監督作品『東京物語』の平山周吉役や、山田洋次監督作品の『男はつらいよ』シリーズの御前様役も、誠実で実直な役の性格を、独特の語りで引き出し、余人に代え難い芸となった。

 黒澤明の監督デビュー作「姿三四郎」で主演した俳優・藤田進は福岡県久留米市出身で、訛りがあった。いかつい風貌と男性的な福岡弁が戦争映画に多く起用され『軍人俳優』と呼ばれたこともあった。

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 ふるさとの訛りなつかし
 停車場の人ごみの中に
 そを聴きにゆく
――石川啄木の歌集『一握の砂』

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