2009年4月14日火曜日

あの名台詞:絶景かな

  桜もお終(しま)いか。

 ガキの頃、高いところに立つと「絶景かな、絶景かな」と意味(出典)も知らず口走っていた。
 屋根の上でデカイ鬘(かつら)をつけた派手な着物の男が、煙管を吹かしていた――あれが大泥棒の石川五右衛門で、あの屋根は京都・南禅寺だと知ったのは、恥かしながら、高校に入ったころだった。
 
絶景かな、絶景かな
春の眺めは値千金とは小せえ、小せえ
この五右衛門の目からは、値万両、万々両

歌舞伎の「楼門五三桐」(さんもんごさんのきり)だ。石川五右衛門が南禅寺の山門の屋上で、夕暮れ時の満開の桜を眺める場である。

 春は宵である。蘇軾(そしょく、蘇東坡=1036年―1101年)も詠んでいる。

 春宵一刻値千金
 花有清香月有陰
 歌管楼台声細細
 鞦韆院落夜沈沈

 歌管=歌と楽器の音。
 楼台=高殿。
 「鞦韆」(しゅうせん)とはブランコで、院落は中庭のことだそうだ。

 滝廉太郎(1879年―1903年)の作曲で有名な「花」には、「春宵」から引用したと思われる、こんな歌詞がある。「春のうららの隅田川」の三番である。作詞は武島羽衣(1872年―1967年)。

 ♪錦おりなす 長堤に
 くるればのぼる おぼろ月
 げに一刻も 千金の
 ながめをなにに たとふべき

 ところで、映画だが、石川五右衛門役を市川雷蔵が「忍びの者」で演じている。
・忍びの者(1962年大映=山本薩夫監督)
・続・忍びの者(1963年大映=山本薩夫監督)
・新・忍びの者(1963年大映=森一生監督)
 市川雷蔵主演の「忍び者」シリーズは、石川五右衛門で3作、霧隠才蔵を主人公に4作、オリジナル忍者で1作と、全部で8作品撮られている。

 江口洋介が石川五右衛門を、大沢たかおが霧隠才蔵を演じる映画「GOEMON」(紀里谷和明監督)が5月1日から全国ロードショーとなる。

×  ×  ×
 「春は宵」と書いたが、清少納言の「枕草子」の冒頭では、「あけぼの」を推薦?している。

 春はあけぼの。
 やうやうしろくなりゆく 山ぎはすこしあかりて
 むらさきだちたる 雲のほそくたなびきたる

 さて、あなたは「宵派」それとも「曙派」?

 かくて花は散り、春は往く‥‥。

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