ガキの頃、高いところに立つと「絶景かな、絶景かな」と意味(出典)も知らず口走っていた。
屋根の上でデカイ鬘(かつら)をつけた派手な着物の男が、煙管を吹かしていた――あれが大泥棒の石川五右衛門で、あの屋根は京都・南禅寺だと知ったのは、恥かしながら、高校に入ったころだった。
絶景かな、絶景かな
春の眺めは値千金とは小せえ、小せえ
この五右衛門の目からは、値万両、万々両
春は宵である。蘇軾(そしょく、蘇東坡=1036年―1101年)も詠んでいる。
春宵一刻値千金
花有清香月有陰
歌管楼台声細細
鞦韆院落夜沈沈
歌管=歌と楽器の音。
楼台=高殿。
「鞦韆」(しゅうせん)とはブランコで、院落は中庭のことだそうだ。
滝廉太郎(1879年―1903年)の作曲で有名な「花」には、「春宵」から引用したと思われる、こんな歌詞がある。「春のうららの隅田川」の三番である。作詞は武島羽衣(1872年―1967年)。
♪錦おりなす 長堤に
くるればのぼる おぼろ月
げに一刻も 千金の
ながめをなにに たとふべき
ところで、映画だが、石川五右衛門役を市川雷蔵が「忍びの者」で演じている。
・忍びの者(1962年大映=山本薩夫監督)
・続・忍びの者(1963年大映=山本薩夫監督)
・新・忍びの者(1963年大映=森一生監督)
市川雷蔵主演の「忍び者」シリーズは、石川五右衛門で3作、霧隠才蔵を主人公に4作、オリジナル忍者で1作と、全部で8作品撮られている。
江口洋介が石川五右衛門を、大沢たかおが霧隠才蔵を演じる映画「GOEMON」(紀里谷和明監督)が5月1日から全国ロードショーとなる。
× × ×
「春は宵」と書いたが、清少納言の「枕草子」の冒頭では、「あけぼの」を推薦?している。
春はあけぼの。
やうやうしろくなりゆく 山ぎはすこしあかりて
むらさきだちたる 雲のほそくたなびきたる
さて、あなたは「宵派」それとも「曙派」?
かくて花は散り、春は往く‥‥。
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