「リヒテンシュタイン華麗なる侯爵家の秘宝」展(国立新美術館)とコラボ企画で、池田理代子が書き下ろしたマンガ「リヒテンシュタイン物語」(朝日新聞社)を読む。第二次世界大戦中、ナチスから所蔵の美術品を命をかけて守った侯爵と美術館長の物語。
× × ×
ヤバイ。見つかっちゃった。
我が家にズカズカ上がってきた親友「トリ頭」こと戸坂健作が、居間でマンガ本「リヒテンシュタイン物語」を目ざとく目を付けた。「ベルばら」の池田理代子さんの作品だと知るとニヤリとしながら、「六十半ばの爺さんがマンガかよ」とひやかしてきた。
「六本木の新美(国立新美術館)でやっているリヒテンシュタイン展を観に行って、カミさんが買ったんだよ」と言い訳がましく言うと、「知ってるぞ。あの侯爵家の美術コレクションは有名だから、な」と得意気な顔をした。そして、例のひとくさりが始まった。
――(以下、トリ頭の弁)
リヒテンシュタインは「侯国」だぞ。
「公国」ではないのだよ。
爵位を知ってるかな。貴族の身分を位階序列だな。
・公(爵)はデュークduke
・侯(爵)はマーキスmarquis
・伯(爵)はアールearl
・子(爵)はバイカウントvicount
・男(爵)はバロンbaron
の序列さ。
リヒテンシュタイン家は1608年、ハプスブルク家から世襲の「侯」の位を授かった。
当主は代々オーストリアのウィーンに暮していたが、1938年に侯国のファドゥーツに移り住む。
1938年にオーストリアがナチス・ドイツに併合されたのがきっかけさ。
その年、夏の離宮の侯爵コレクションも公開中止となった。
ナチスは価値の高い美術品の国外持ち出しを禁じた。
そこで、ナチスの目をかいくぐっての移送を計画したのだ。ばれたら待っているのは死だよ。
ザルツブルクの郊外の岩塩鉱に運んだり、何度となく場所を替えたりした。
夜陰に乗じて国外脱出したり、決死の努力のすえ侯国の都ファドゥーツにたどり着いたのだよ。
2004年になってようやくウィーンの夏の離宮でコレクションが再公開された。
公開中止から実に66年の歳月が流れた。リヒテンシュタイン・コレクションってドラマティックなのだよ。
今回ばかりは、「トリ頭」の講釈はかなり為になるの最後まで聞いてしまった。
だが、しかし、彼の知識はネット検索で得たに違いない。3歩歩けばモノ忘れするニワトリさんと一緒で、翌日はケロリと忘れているだろう。
戸坂は「鶏冠」(とさか)に、健作は「検索」に通じて、戸坂健作のあだ名は「トリ頭」だから。愛すべき友である。
2012年11月1日読了
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