2009年7月11日土曜日

あの名台詞:沓掛時次郎

*ガキのころ、映画や芝居の台詞を覚えるのが好きだった。長谷川伸シリーズの今回は、「沓掛時次郎」である。

あっしは旅人でござんす。
一宿一飯の恩があるので、
怨みもつらみもねぇお前さんに敵対する、
信州沓掛の時次郎というくだらねぇ者でござんす。

左様でござんすか。
手前もしがねぇ者でござんす。
ご丁寧なお言葉で、お心のうちはくみとりまするでござんす。

信州沓掛生まれの時次郎は、親分なし子分なし一本独鈷の旅烏。一宿一飯の恩義から、なんの怨みもない六ツ田の三蔵を長脇差のやりとりをする破目になり斬ってしまう。息を引き取る間際、三蔵は女房おきぬと倅の太郎吉を、おきぬの在所に送り届けることを託される。亭主の敵と旅をするおきぬは時次郎を憎んでいたが、月日の流れと時次郎の誠に心を開き、いつしか愛するように‥‥。

 名台詞は沓掛時次郎と六ツ田三蔵が、白刃を交える前の口上である。

 1961年(昭和36年)大映で、市川雷蔵が沓掛時次郎 [DVD]を、おきぬに新珠三千代で映画化されている。監督は池広一夫だった。主題歌は橋幸夫が歌った。作詞は佐伯孝夫、作曲は吉田正。
 ♪女知らずが 女の世話を
  その上 坊やの手をひけば

 1966年には東映沓掛時次郎 遊侠一匹 [DVD]で、中村錦之助の時次郎と池内淳子のおきぬのコンビで、加藤泰監督で撮っている。このときの六ツ田の三蔵は東千代之介だった。

 戦前にも大河内伝次郎、林長二郎(後の長谷川一夫)が時次郎役を映画で演じている。1928年(昭和3年)に発表された長谷川伸の戯曲だが、当代きっての時代劇俳優が演じるほどに魅力的な役柄だった。


 そういえば、超人気テレビ番組「てなもんや三度笠」(1962年~1968年朝日放送)で藤田まことが扮した「あんかけの時次郎」は、本家の沓掛時次郎のパロディであった。
 「泉州は信太の生まれ。あんかけの時次郎。義理にゃ強いが人情にゃ弱い。男の中の男一匹‥‥」と、番組の最初に口上を述べ寸劇があり、「オレがこんなに強いのも、あたり前田のクラッカー」とコマーシャルに繋げていたっけ。

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