あっしは旅人でござんす。
一宿一飯の恩があるので、
怨みもつらみもねぇお前さんに敵対する、
信州沓掛の時次郎というくだらねぇ者でござんす。
左様でござんすか。
手前もしがねぇ者でござんす。
ご丁寧なお言葉で、お心のうちはくみとりまするでござんす。
名台詞は沓掛時次郎と六ツ田三蔵が、白刃を交える前の口上である。
1961年(昭和36年)大映で、市川雷蔵が沓掛時次郎 [DVD]を、おきぬに新珠三千代で映画化されている。監督は池広一夫だった。主題歌は橋幸夫が歌った。作詞は佐伯孝夫、作曲は吉田正。
♪女知らずが 女の世話を
その上 坊やの手をひけば
1966年には東映沓掛時次郎 遊侠一匹 [DVD]で、中村錦之助の時次郎と池内淳子のおきぬのコンビで、加藤泰監督で撮っている。このときの六ツ田の三蔵は東千代之介だった。
戦前にも大河内伝次郎、林長二郎(後の長谷川一夫)が時次郎役を映画で演じている。1928年(昭和3年)に発表された長谷川伸の戯曲だが、当代きっての時代劇俳優が演じるほどに魅力的な役柄だった。
そういえば、超人気テレビ番組「てなもんや三度笠」(1962年~1968年朝日放送)で藤田まことが扮した「あんかけの時次郎」は、本家の沓掛時次郎のパロディであった。
「泉州は信太の生まれ。あんかけの時次郎。義理にゃ強いが人情にゃ弱い。男の中の男一匹‥‥」と、番組の最初に口上を述べ寸劇があり、「オレがこんなに強いのも、あたり前田のクラッカー」とコマーシャルに繋げていたっけ。
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