警察小説と探偵小説
堂場瞬一の「刑事・鳴沢了」シリーズ第1弾の「雪虫」(中公文庫)を読む。シロイヌである。
祖父・父に続き三代目の捜査一課の刑事となった鳴沢了(なるさわ・りょう)が主人公の警察小説である。「雪虫」はその最初の作品。新潟・湯沢で殺された老女は元宗教教団の教祖で、彼女は戦後間もない50年前、殺人事件に関わっていた――というストリーで展開される。ハードボイルドタッチで事件を追う鳴沢了の姿と、ラブロマンスも織りなしeasy-readingに最適だと思う。
草野的には、鳴沢了の初恋の人、銀行に勤める石川喜美恵の存在が、気に入った。文章から想像するに、細身で知的な美人であろう。肩が凝らず、専ら就寝前にベッドで寝転がり、読んでいる。
堂場瞬一(どうば・しゅんいち)は、「雪虫」を皮切りに「被弾」「熱欲」「孤独」「帰郷」「讐雨」「血烙」「被匿」「疑装」「久遠」などシリーズ化している。元読売新聞の記者で、デビュー作は2000年の小説すばる新人賞の「8年」というスポーツ小説だったという。
警察小説というジャンルはいつごろから生まれたのだろうか。推理小説の新しい呼称であり、カテゴリーといえる。言葉として定着したのは、横山秀夫の登場あたりからではないだろうか。
そういえば、昭和のころ「探偵小説」という呼び方があった。当用漢字の制限で「偵」が使用できないために、言葉として廃れたという。「探偵小説」に郷愁とレトロを感じるなぁ。
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