黄色いさくらんぼ・おんなの宿・昔の名前で出ています
「黄色いさくらんぼ」「函館の女」「三百六十五歩のマーチ」などのヒット曲で知られる昭和を代表する作詞家・星野哲郎(ほしの・てつろう)さんが2010年11月15日亡くなった。85歳だった。※以下敬称略
× × ×
♪若い娘が(ウッフン) お色気ありそうで(ウッフン)
なさそうで(ウッフン) ありそうで(ウッフン)
なんだ、この歌は。*「黄色いさくらんぼ」は衝撃だった。
流行ったのは小学校高学年だった。街っ子でませたガキには、『おとなの世界』を感じさせた。人前で歌うのは「これはまずいぞ」と憚(はばか)ったものだ。
作曲したのは、あのヘンテコな曲「僕は泣いちっち」のハマクラこと浜口庫之助とわかったが、作詞が星野哲郎と知ったのは随分と後のことだった。
思わせぶりな作詞は只者ではない。スリー・キャッツの歌唱もあり、1959年(昭和34年)のヒット曲となった。
昭和歌謡史に残るお色気ソングだと思う。
大下八郎が歌った*「おんなの宿」も作詞が記憶に残る。作詞・星野哲郎、作曲は船村徹である。1964年の作品。
♪想い出に 降る雨もある
恋にぬれゆく 傘もある
人妻の道ならぬ恋。忍び逢い。伊豆の温泉場。……。そして。別れの朝、駅で列車を待つふたり。2番の作詞がしびれる。
♪たとえひと汽車 遅れても
すぐに別れは 来るものを
「わざと時計の針を遅らせ」、少しでも一緒にいたい女心が切々と伝わってくるのだ。
小林旭の*「昔の名前で出ています」は愛唱歌である。酒場に生きる女がいる。恋する男がいた。愛した時があった。女の前にいろんな男が通り過ぎて行った。が、忘れられない男がいる。
♪京都にいるときゃ 忍と呼ばれたの
神戸じゃ 渚と名乗ったの
「忍」と「渚」っていかにもその土地にちなんだ源氏名だよね(笑)。
女のホームグランドは横浜(ハマ)。愛した男と出逢ったハマに戻り、昔の名前で酒場に出て、昔の男を待っている。3番の歌詞では、ボトルに男の似顔絵を描き、「ひろみの命」と書いていることがわかる。
昔の名前は「ひろみ」なんだ。
ひろみさんにご指名はあったのだろうか。
作曲は叶弦大。1975年作品。
「黄色いさくらんぼ」は成長過程にある未成熟の女性、そして「女の宿」と「昔の名前で出ています」は女盛りを描いているのですなぁ。星野哲郎は艶歌の達人なのです。
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