霧笛が俺を呼んでいる
思わず口ずさむ歌がある。季節や、世の出来事によって無意識に歌っているのだ。事象に接し脳が刺激され、記憶のなかから適時、曲を選んでいる。この痴呆気味の頭脳にどれほどの曲が詰まっているかは定かでないが、脳が命令もしないのに勝手に歌い出す。そして、そのあとから郷愁に誘わることがある。
ターキーこと水の江滝子が訃報を知った11月からは、赤木圭一郎の「霧笛が俺を呼んでいる」である。1960年(昭和35年)の日活映画の主題歌だ。監督は山崎徳次郎、脚本は熊井啓だった。水の江滝子の企画だった。
白い上下の航海士姿の赤木圭一郎と白いワンピースの芦川いづみが、霧がたちこめる横浜の波止場を歩く別れのラストシーンが印象的だった。
♪さびた錨に からんで咲いた
浜の夕顔 いとしい笑顔
海で育った船乗りは海に帰るのが宿命(さだめ)なのか。日活アクションのラストは、好き合った男と女がなぜか別れるのだ。
ボー。ボー。霧笛がせかせるように咽びなく。船に向うトニーに哀愁が漂う。
なんちゃって、いいようねぇ(笑)。
霧笛:濃霧などで視界不良のときに、衝突事故を防ぐために船舶や灯台などが鳴らす汽笛。きりぶえ――小学館デジタル大辞泉。
× × ×
「霧笛が俺を呼んでいる」の作詞は水木かおる。作曲は藤原秀行だった。2人のコンビで有名なのは、西田佐知子が歌った「アカシアの雨がやむとき」だろう。
♪アカシアの雨に うたれて
このまま 死んでしまいたい
2人の歌でやはり西田が歌った「エリカの花散るとき」なんて曲がありました。
水木かおるの作詞で、遠藤実作曲では、「くちなしの花」「みちづれ」がある。こちらは赤木圭一郎の日活の後輩、渡哲也ですな。朴訥な歌っっぷりが似ているよね。
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さてあっという間に2009年も大晦日です。
横浜では午前0時。港に停泊している船が一斉に汽笛を鳴らします。往く年、来る年の合図ですね。煩悩を滅する寺の鐘音もいいですが、除夜の汽笛も心に沁みます。
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