盲目の老剣士
佐伯泰英の“居眠り磐音江戸双紙シリーズ第29弾「冬桜ノ雀」”(双葉文庫)を読む。
次期将軍とされる家基が悪夢に襲われ、生命の危機に瀕する。かって武名を轟かせたタイ捨流達人、盲目の老剣士と、その孫の女武芸者の仕業だが、剣士は生きていれば齢100歳を超えるという。磐音を討つべく刺客も、とうとうオカルトまがいの登場人物となり、いささか荒唐無稽の感を逃れられない。
いずれにせよ史実によれば、「幻の11代将軍」家基は安永8年(1779年)に急逝するので、死期が迫ったことになる。このシリーズでは、どのような展開になるのだろうか。
もうひとつの興味は、磐音とおこんに子宝は授かるのか。ふたりの夜の営みを想像させる場面を佐伯泰英が珍しく二度ほど登場させたのは、ベビー誕生の伏線と草野球音はみたがどうだろうか。次回以降に二世が見られるか。
千利休ゆかりの茶碗をめぐる武家の諍(いさか)い、脱獄囚の能楽の丹五郎一味の捕物のエピソードも盛られている。鼠志野の茶碗で登場する高家瀬良家の殿様が、なにやら「忠臣蔵」の吉良上野介を彷彿させるキャラクター。丹五郎一味の捕縛事件には、笹塚孫一、木下一郎太、竹村武左衛門ら懐かしい顔も揃い、シリーズらしい展開となっている。
2009年5月5日読了
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