2008年4月3日木曜日

ノンちゃんは雲に乗って

 その訃報が記憶のセンサーに触れた。

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 「ノンちゃん雲に乗る」の小説や、「クマのプーさん」「ピーターラビット」などの海外児童文学の翻訳で知られる児童文学者の石井桃子(いしい・ももこ)が、2008年4月2日死去した。101歳だった。
 日本児童文学に貢献、自伝的小説「幻の朱い実」で、1995年に読売文学賞。1997年に日本芸術院会員。晩年も英国作家A・A・ミルン自伝の翻訳や執筆活動を行い、100歳を過ぎても児童文学への関わりを持ち続けていた。

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 草野球音は、浅学のため石井桃子のことは知らなかったが、記憶を呼び起こしたのは「ノンちゃん雲に乗る」である。したがって、故人には失礼な話だが、「ノンちゃん―」のことを書きたい。

 小説「ノンちゃん雲に乗る」の作品発表は、1947年(昭和22)と60年も前で、ベストセラーとなり、1955年(昭和30)に同名タイトルで映画化された。
 「ノンちゃん―」は、鰐淵晴子の映画デビュー作として記憶に留める。残念ながら、映画は観ていないが、子役の鰐淵の存在は輝いていた。当時10歳ではなかったか。父はバイオリニストの鰐淵賢舟、ドイツ人の母との混血児(ハーフというようになったのは後年か)特有の目鼻立ちの陰影の深さ、育ちの良さから漂う気品が感じられた。
 兄や姉から映画については聞かされていたが、あまりに子供で記憶に残っていない。鰐淵晴子は球音と誕生日が一緒で、彼女がちょうど2歳年上である。
 インターネットで調べると、
ノンちゃん:鰐淵晴子ノンちゃんの母親:原節子ノンちゃんの父親:藤田進 (1912年―1990年)雲の上で出逢う老人:徳川夢声(1894年―1971年)と、いう懐かしい顔ぶれだった。
 
 五輪スキーアルペン競技の三冠王、トニー・ザイラー(オーストリア)を招いて映画化された「銀嶺の王者」(1960年・松竹)には、ザイラーの相手役に選ばれ、話題をまいた。
 「伊豆の踊り子」(1960年・松竹)では踊り子役を演じ、学生役は津川雅彦だった。
 松竹では、桑野みゆき、岩下志麻、倍賞千恵子らと、看板女優として妍(けん)を競った時期があった。
 立派に成長した女優より、10代での面影が印象に残る鰐淵晴子である。

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