上手(じょうず)が下手(へた)を装うのは、奥が深い。
ピカソを「ガキの落描きみてぇだな」なんて、それこそガキ時分に思っていた。下手くそな絵。が、それは一見であり、絵に込められた渾身の思想が徐々に感じられるようなれば、「落描き」は「名画」となるそうな。私も理解できているは言い難いのだが……(ポリポリ)。
ピカソの10代前半のころ描いた絵をどこぞで観たが、上手(うま)い。非凡な画力だった。
相田みつをさんの書も一見は「ガキの手習い」だが、思想がある。
1954年(昭和29年)から書の最高峰、毎日書道展に7年連続入選した正統派の書家としても実力はピカイチ。名人上手なのだ。上手(うま)い人が下手に書(描)くのは何故だろうか。
私にもわからない(ガクッ……とズッコケ)……それを言っちゃ終(おし)いよ。
勝手に推理すれば、伝えたい思想の凝縮した表現なのではないか。無駄を捨て、書(描)きたいことだけを書(描)く。その結果というか結晶が、作品になったのではないだろうか。
――なんて、ぐだぐだ思いながら、東京・丸の内の東京国際フォーラム内の「相田みつを美術館」を観ました。
そこには人生訓がありました。
真っ当に生きなければ……無駄に馬齢を重ねる己を省みましたのでした。
※相田(あいだ)みつを
1924年(大正13年)栃木県足利市生まれ。1954年から書の最高峰、1984年(昭和59年)に詩集「にんげんだもの」が出版され、世に知られるようになる。平易な詩を独特の書体で書いた作品で、「書の詩人」と称される。1991年(平成3年)67歳で没する。
2012年6月26日観覧