2010年5月4日火曜日

鳴海章「幕末牢人譚」

百姓から剣の凄腕になった男

 ペリー率いる黒船が浦賀に来航した嘉永6年、品川宿。食い詰め牢人の針谷清蔵と南部権十郎が、視察に来た佐久間象山とその供侍・勝麟太郎に交錯する。百姓の三男坊、なんとか自活の道をと侍を装って江戸に出た針谷は剣の腕はからっきし素人。もうひとり南部は腕がたつが、無類の酒好きだった。

 鳴海章の「幕末牢人譚 秘剣 念仏斬り」(集英社文庫)を読む。

 針谷は中山道の武州浦和の先、針ヶ谷村の百姓の生まれ。本家の物置に埃をかぶっていた銘などない刀を持ち出し、幼馴染の鍛冶屋の倅に研いでもらい江戸に出てきた。剣を知らない男が、勝麟太郎の家で会った倉田の食客となり剣の道を学び、凄腕に成長していく――。

×  ×  ×

 この作品は恐らくシリーズ化するだろう。

 縄田一男が巻末解説で書いていることだが、なぞらせてもらう。南部権十郎は、南條範夫原作の『月影兵庫』の近衛十四郎を、また、針谷の師匠の倉田は大佛次郎原作のあの『鞍馬天狗』の偽名である『倉田典膳』をモデルにしているようだ。読んでいて時代劇好きはニヤリとさせられる。
 勝麟太郎、坂本龍馬、佐久間象山、清河八郎ら歴史上の人物も登場、幕末という時代を活写している。
2010年5月4日読了幕末牢人譚 秘剣 念仏斬り (集英社文庫)

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