横山秀夫の処女作ルパンの消息 (光文社文庫)を読む。
彼が上毛新聞社の記者時代にサントリーミステリー大賞に応募、佳作となり、作家生活への一歩を踏み出した作品。長らく未出版だったが、2005年に改稿し光文社カッパノベルズとして刊行された。今回(2009年)さらに加筆され文庫化された。
15年前の女教師の自殺事案につき
他殺の疑い濃厚との有力情報あり
至急、帰署されたし
平成2年(1990年)12月、忘年会の宴もたけなわ。某警察署の署長・後閑耕造(ごせき・こうぞう)に伝言が届いた。
女教師嶺舞子(みね・まいこ)の自殺と処理していた案件は、実は殺しだった。
タレコミ(有力情報)には容疑者の名前も特定され、「ルパン作戦」というキーワードも示されていた。容疑者は当時、高校生の喜多芳夫、竜見譲二郎、橘宗一の3人で、「ルパン」はたむろする喫茶店名だった。その喫茶店経営者・内海一矢は、「三億円事件」の有力容疑者であった。
時効まで24時間と迫るなか、本庁捜査一課強行犯捜査第四係の係長・溝呂木義人(みぞろぎ・よしと)の指揮のもと、息を吹き返した女教師殺人事件の捜査が始まった。
終盤、犯人が割り出され事件が解決されたかに見えるが、どんでん返しが待っている。
高校生の生態に描写が多く割かれているあたりが、初期作品ゆえか。警察小説とは趣きが異なる。ただ、ここでの警察内部の組織や人間の描写が熟成され、「陰の季節」「動機」という後の出世作に繋がったと思う。
2009年6月13日読了
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