*ガキのころ、映画や芝居の台詞を覚えるのが好きだった。覚える間もなく忘れてしまう健忘症気味の今と違い、記憶力はよかった。
歌舞伎の「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)」の源冶店(げんやだな)の場。切られ与三郎が、蝙蝠(こうもり)安に連れられ強請(ゆす)りに行った妾宅で見たのはかっての恋人、お富だった。
「ご新造さんへ、お上さんへ、お富さんへ。イヤサお富、久しぶりだなぁ」と頬被りの手ぬぐいをとり、顔をみせた切られ与三郎が名台詞を吐く――。
しがねぇ恋の情けが仇(あだ)
命の綱の切れたのを
どう取り留めてか
木更津から
めぐる月日も三年(みとせ)越し
~中略~
死んだと思ったお富たぁ
お釈迦さまでも気がつくめぇ
よくまぁ おぬしぁ 達者でいたなぁ
安やい これじゃぁ一分(いちぶ)じゃぁ
帰(けぇ)られめぇじゃねぇか
この台詞覚えの原点は、春日八郎の「お富さん」だった。情景が浮かんでくるような作詞は山崎正、軽快な作曲は渡久地政信である。1954年(昭和29年)のヒット曲だ。
♪粋な黒塀 見越しの松に
仇な姿の 洗い髪
死んだはずだよ お富さん
× ×
米国テレビドラマ「24-Twenty Fours-Redemption」をDVDで観る。
今回はシーズン6とシーズン7の橋渡し的なエピソードとなっている。舞台はアフリカ・サンガラ。特殊部隊仲間のベントンのもとに身を寄せたジャック・バウアー(キーファー・サザーランド)が、政情不安の地でクーデターに巻き込まれる。
DVDにシーズン7の予告編があった。なんと、シーズン5で死んだはずのCTU時代の同僚トニー・アルメイダ(カルロス・バーナード)が敵役で再登場するのだ。
まさに切られ与三郎の台詞ではないが、「よくまぁ おぬしぁ 達者でいたなぁ」といいたくなった。俄然、シーズン7が観たくなった。
2009年3月28日DVD観
私も歌舞伎が好きなのでお気持ちわかります。
返信削除文句なしですが強いて言うなら中略しないでほしかった