大賢は愚に似たり――竜馬のような成田長親
和田竜の*「のぼうの城(下)」(小学館文庫)を読む。
大賢は愚に似たり。
『のぼう様』成田長親は坂本龍馬を彷彿させる。
本当の賢人・大物というものは、一見(常人には)馬鹿に見えるものかもしれない。司馬遼太郎の小説「竜馬がゆく」のなかで、土佐の大殿さま、山内容堂が初めて坂本竜馬と会見して、その人物評だったと思う。「大賢は愚に似たり」と言ったとか。
木偶(でく)の坊、成田長親は一見うすら馬鹿だが、只者ではない。『将器』だった。
× × ×
石田三成の使者、長束正家の高圧的な降伏勧告に、長親は「戦いまする」と返答する。小田原城に籠城した忍城の城主・成田氏長だが、関白秀吉に内応しており、正木丹波らに和睦を言い付けていた。氏長の意思を翻し、長親は忍城の総大将として立ち上がる。
敵将の戦の決断に三成はほくそ笑む。忍城各門に大軍を配する。が、緒戦は意外にも劣勢の長親軍に痛い目に合う。
三成は忍城を水攻めの奇策を練るのだった……。
緒戦に敗れた三成が、下忍村の百姓かぞうから敵将の正体を探る描写を引用する。
「なぜのぼう様じゃ」
「いや、それは」
かぞうは躊躇するふうであったが、やがて
「でくの坊ゆえ、皆、のぼう様とお呼びいたしてござります。
――中略
「どう思う」
三成は、(大谷)吉継にきいていた。
「でくの坊といわれて平然としておる男か」
吉継は深刻そうな顔つきでつぶやいた。
「果たして賢か愚か」
目次
・3
・4
・終
× × ×
ただ長親は竜馬ほど颯爽としていないのだよね。「将器」をときたま見せるものの、冴えない男で、正木丹波や柴崎和泉、酒巻靱負(ゆきえ)の脇役陣の方がよほど武(もののふ)って感じでかっこいい。
大賢は愚に似たり――長親からそんな竜馬評を表す言葉を思い出しました。
ところで、大谷吉継ですが、戦国武将で人気に高い真田幸村の義父になるのですね。池波正太郎の「真田太平記」にも登場します。幸村は彼の娘を正妻に迎えています。
2010年12月6日読了
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