2009年12月24日木曜日

あさのあつこ「弥勒の月」

巧み冒頭の“つかみ”
 あさのあつこの「弥勒の月」(光文社文庫)を読む。
 冒頭の“つかみ”が巧い。文庫文末の解説で児玉清が触れているが、興味を惹かれ物語へのめり込む。

 月が出ていた。丸く、丸く、妙に艶めいて見える月だ。
 女の乳房のようだ。(――本文より)

 女遊びの帰路、満月にあられもない想像をめぐらした南本所石原町の履物問屋、稲垣屋惣助は、二つ目之橋で若い女の身投げを目撃する。現場に残されたのは、赤い鼻緒の下駄だった。なぜか履物屋の彼は下駄を抱きかかえてその場を去った。

 翌朝、一ッ目之橋近くの朽ちかけた杭に引かかった女の死体が発見される。

 女は森下町の小間物問屋遠野屋の若おかみ、おりんだった。遺体を前に、遠野屋の主人清之介はいささかも取り乱さなかった。尋常でない、その姿に北定町廻り同心、木暮信次郎は不審を抱き、岡っ引の伊佐治に身辺を洗え、と命じた――。

目次
・第一章 闇の月
・第二章 朧の月
・第三章 欠けの月
・第四章 酷の月
・第五章 偽の月
・第六章 乱の月
・第八章 陰の月
・第九章 終の月

 鋭い言葉で迫る信次郎と、ドンと受けてたつ清之介の対峙に緊迫する。
×  ×  ×
 続編の「夜叉桜」から本編へと逆コースとなったが、人物設定を知っているので解りやすかった。まだ、読んでいない方には、当たり前ながら順序通りに読むことをお勧めする(笑)。

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