まろほし銀次
鳥羽亮の「まろほし銀次捕物帳―愛弟子」(徳間文庫)を読む。「まろほし銀次捕物帳」はシリーズ化されていて、すでに10巻ほど刊行され「愛弟子」は最新作とか。
「まろほし」の異名は、銀次が江戸の岡っ引きにして、一角流十手術に伝わる特殊な小武器の遣い手でもあるところから由来している。「まろほし」とはその小武器である。このあたりの設定も剣道有段者・鳥羽のアイデアだろう。野村胡堂の「銭形平次」の投銭のような代物で、岡っ引きを主人公にした時代小説の場合、武士の刀剣に対抗するには十手だけは心もとないため“キメ技”があると組み伏せ捕縛する説得力が出るためではないか、と草野球音は考える。
・騙(かた)りの権八
・嘘から出た殺人(ころし)
・九寸五分の男
・叫び
・愛弟子
以上5編からなる連作構成となっている。
表題となっている「愛弟子」がいい。辻斬りが2件続けて起った。銀次と昵懇の道場主の向井藤三郎は死人の傷跡から、ある弟子の太刀筋を思い出す。剣才を認め目をかけていたが、貧しさ故に剣の道から外れなければならなかった男がいた。向井は真相を確かめるため夜毎、辻斬りを待ち闇に立つが……。
× × ×
鳥羽の作品は、
「はぐれ長屋の用心棒」(双葉文庫)・逢魔時の賊
「八丁堀剣客同心」(ハルキ文庫)・華町源九郎江戸暦/袖返し
を読んだことがあったが、「まろほし銀次―」は初めて。シリーズの一見読者にも配慮して、人物など登場シーンでその都度説明してあるので、すんなり読める。
2009年11月3日読了
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