版画家にして英語教師
ぶらり散歩に出る。横浜駅東口のそごう美術館(そごう横浜店6階)で『文明開化を描いた版画家 川上澄生展』(5月9日~6月7日)を観る。
横浜開港150周年ということで、横浜・紅葉坂生まれで黒船やペリーなど文明開化の風物を制作した版画家・川上澄生(かわかみ・すみお)の約500点の作品を展示している。
川上(1895年―1972年)は6歳で東京に移住しているので、横浜での生活は短い。幼少時の文明開化の匂いが濃厚に漂うふるさと横浜に、強い郷愁を感じ作品のモチーフとしていた。
展示を通して観ると、横浜・文明開化・南蛮というキーワードの作品もさることながら、木版画、木版の絵本、ガラス絵、革絵、木工品、書籍装丁など多岐多彩多作のクリエーターであることを知った。この多作のほとんどが、昼は教壇に立ちながら、夜にせっせと作りあげたとは恐れ入る。
22歳でカナダ、アラスカへと渡り、帰国後の1921年に栃木県宇都宮中学(現・宇都宮高校)の英語教師となった。疎開先の北海道・苫小牧(苫小牧中学=現・苫小牧東高校)、さらに戦後に宇都宮女子高校でも教鞭をふるっている。版画に専念したのは63歳の退職後だったという。生涯に数千点の作品を生み出した。
作品のなかでは、「へっぽこ先生」という木版画が気に入った。左手に風呂敷、右手にステッキ、山高帽子に三つ揃いの背広、眼鏡をかけた紳士が田舎道を歩いている。これは川上澄生自身の姿だろう。観ていると、ユーモラスであり、ほのぼのしてくるのだ。
2009年5月14日観覧
0 件のコメント:
コメントを投稿