2010年5月15日土曜日

池波正太郎「あほうがらす」

「ポン引き」「売春斡旋業者」

 池波正太郎の「あほうがらす」(新潮文庫)を読む。
 30代が司馬遼太郎、40代には「鬼平犯科帳」「剣客商売」「仕掛人・藤枝梅安」の三大シリーズを夢中になって読んだ。そして50代以降は藤沢周平というのが草球kusatamaの読書歴だ。
 今でも思い出したように読むのだが、久々に池波ワールドを堪能した。最近の時代小説にはついぞ味わえぬ小説の粋、江戸弁の会話の自然さ――さすがですな。

 11篇からなる短編集。
・火消しの殿
・運の矢:
・鳥居強右衛門
・荒木又右衛門
・つるつる
・あほうがらす
・元禄色子
・男色武士道
・夢の茶屋
・狐と馬
・稲妻

 火消し訓練に異常な執念をみせ、色子好きの浅野内匠頭を描いた「火消しの殿」。同じく忠臣蔵を題材とし「元禄色子」は、討ち入り目前、美しい色子に恋した大石内蔵助の嫡男・15歳の主税の物語だ。
 表題となった「あほうがらす」の意味は、「店を持たず抱え女もなく、単独で女を客にとりもつ所業(しわざ)をする者を売春業者が軽蔑していう当時の呼び名」と池波自身が書いている。「ポン引き」「売春斡旋業者」の話だが……。
 11篇どれもがシロイヌ(尾も白い⇒面白い)。

×  ×  ×

 文庫のカバー装画は池波正太郎の作品。カラスが手ぬぐいをほっかぶりして煙管をくわえている図はユーモラスだ。彼は子どもころ鏑木清方の弟子入りを目指したほど絵が好きだったという。
2010年5月14日読了あほうがらす (新潮文庫)

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