2009年5月14日木曜日

築山 桂「禁書売り」

緒方洪庵が事件に挑む

 築山桂の「禁書売り~緒方洪庵 浪華の事件帳」(双葉文庫)を読む。
 この本に惹かれたというか、トリガーになったのは「緒方洪庵」だった。緒方洪庵(1810年―1863年)は、大村益次郎、福澤諭吉、大鳥圭介、橋本左内を輩出した蘭学の私塾「適塾」(正式には『適々斎塾』)の主宰者であり、幕末から明治にかけての日本近代化の功労者のひとりだ。その歴史上の実在した人物が事件に関わるという、副題に興味を持って手にしたのだった。

 これは超シロイヌである。特に男装の麗人、左近が魅力的だった。
 大坂の蘭学塾「思々斎塾」で勉学に励む緒方章(後の洪庵)は、師匠の中天游(なか・てんゆう)のため禁制の蘭学書を購入しようと、禁書売りと接触する。ところが取引の場所で、禁書売りは殺されていた。
 困惑する章の前に現れたのは、大坂の町を護る「在天」の左近という男装の娘だった。
・第一話「禁書売り」
・第二話「証文破り」
・第三話「異国びと」
・第四話「木綿さばき」
 一話ごとに章と左近が事件を解決するが、物語は進行する連作となっている。
 副題に「浪華」とあるように、江戸時代の大坂が舞台となっている。作者の大坂に対する想いがあるのかもしれない。築山桂(つきやま・けい)は大阪大学院卒の既婚女性だそうだ。

×  ×  ×

 NHKで緒方章に窪田正孝、左近に栗山千明のキャストで「土曜時代劇・浪花の華~緒方洪庵事件帳」として今春まで放送されていた。
2009年5月13日読了

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