2007年9月27日木曜日

面白い横山秀夫

 デジタル大辞泉(小学館)を引く。
 悠々自適:世間のことに煩わされず、自分の思いのままに暮らすこと。
 三昧:仏語(フランス語ではない=笑)、心を一つの対象に集中して動揺しない状態。雑念を去り没入することで、対象が正しくとらえられるとする。(接尾語として)そのことに熱中するという意味。読書三昧で暮らす、など。

 故あって逼塞(ひっそく)した。隠居にして覆面雑文屋である草野球音は日がな一日、読書に時間を費やすことが多い。傍目には羨ましい「悠悠自適の読書三昧」と思われがちだが、いやいや、自身はまだ多少の山っ気もあり充足感のない日々でもあるのだ。が、本を読むことで救われる一面もあることは事実である。

 古いに日本映画の次は、球音の読書傾向などを記す。好みは池波正太郎、藤沢周平などの時代小説であるが、この項は横山秀夫である。
 つい最近「臨場」(光文社文庫)を読んだ。面白い。臨場とは、警察組織では事件現場に臨み初動捜査にあたることをいう。捜査一課の調査官で「終身検視官」の異名をとる倉石義夫が死者からメッセージを読み取り事件を解く。異能というべき特殊な目をもつ倉石は組織に媚びない一匹狼だが、人間味のある男で魅力的だ。「赤い名刺」など8短編を一気に読んでしまった。
 横山秀夫(よこやま・ひでお)は、1957年(昭和32)生まれ、警察小説の書き手と知られる小説家である。経歴などファンには釈迦に説法は承知の上で、ざっくり説明する。上毛新聞社で12年間の記者生活を経験した。1991年(平成3)に「ルパンの消息」でサントリーミステリー大賞佳作となり、その後「陰の季節」「動機」など評判作を世に出し売れる作家となった。2003年(平成1)「半落ち」が直木賞候補となったが、現実性に欠けるとの評が持ち上がり落選している。

 球音が読んだ横山作品は、
「陰の季節」(文春文庫)
「動機」(文春文庫)
「出口のない海」(講談社文庫)
「深追い」(新潮文庫)
「第三の時効」(集英社文庫)
「影踏み」(祥伝社文庫)
「顔」(徳間文庫)など。
 直木賞の件はともかく読んでも面白い作家であることは間違いない。

2 件のコメント:

Tell-me さんのコメント...

横山秀夫はいいですよね。
ただ、「出口のない海」は“映画ありき”で書かれた作品で、薄いような気もしますが…
氏の作品では「クライマーズ・ハイ」が一番好きです。
山崎豊子の「沈まぬ太陽」と読み比べると日航機墜落事故の凄惨さ、悲痛さを実感します。
ホリエモンじゃないけど、御巣鷹山を慰霊に訪れねばと思いますね。

我心吾 さんのコメント...

分かりやすい「顔」が好きです。犯人の似顔絵を書くの若い婦警の顔こそ、どんな顔だろうと興味を持ってしまいます。確か、仲間由紀恵でドラマ化されたかな? 間違っていたら赤ペンで注意してください。